勉強の方法論については、様々な意見があります。私は、学習の過程を3段階に分けて、それぞれの段階で勉強の方法を変えるのが効果的かつ効率的だと、経験的に考えています。
- 認知 = 知る段階
- 連合 = 身につける段階
- 自動化 = 無意識で実行できる段階
勉強はスポーツと似ている
勉強とスポーツは似ていると思いませんか?どちらも上達していくには日々の練習が欠かせません。勉強とスポーツいずれにおいても、スキルを習得し、マスターしていくのがパフォーマンスを上げる近道です。
前述した学習の過程を認知、連合、自動化の3段階に分ける考え方は、スポーツに関する分野(運動学習)ではとても一般的な考え方です。それぞれの段階について簡単に見ていきましょう。
認知段階 = 知る段階
学習の一番最初の段階は「知る」段階です。そもそも知らない状態では、習得も何もありません。
例えば「かけ算の九九」を例にすると、かけ算の意味や基本的なルール、やり方を知り、一の段から九の段までの計算結果を記憶するという段階です。この段階では、知っていてもその通りに出来ないということがしばしば起こります。例えば、他の計算と答えを取り違えてしまったり、十の位を言い間違えてしまったり・・・基本的な計算ミスを連発するのもこの段階です。
連合段階 = 身につける段階
基本的な理解が進み、意識していれば習得したことを実行できる段階です。認知段階で知ったことを、実際に使いこなせるようになる段階です。
例えば「かけ算の九九」を例にすると、九九を一通り覚えて百ます計算で計算スピードを上げる練習をし始めるような段階です。思い出すのにいくらか労力を要する場合もあるものの、基本的な誤りは少なくなります。
学習の初期段階では、この連合段階(=身につける段階)を目指すことが多いと思います。人によっては、この連合段階で「マスターした」と考えてしまうことがあるようですが、本当のマスターにはまだ距離がある段階です。
自動化段階 = 無意識で実行できる段階
アウトプットが自動化され、意識しなくても安定したパフォーマンスが実現できる段階です。
例えば「かけ算の九九」を例にすると、意識して計算しなくとも答えがパッと出てくるような状態でしょう。この状態になると、基本的な誤りというのはほぼ起こり得ません。
勉強の方法論
認知、連合、自動化の3段階について説明しましたが、現在どの段階にあるかを理解して、それに適した勉強方法とることで、学習の効率を格段に向上させることができます。
認知段階 = 知る段階
初めて学習する事柄については、まずは丁寧に、しっかり、正しく理解することが大切です。少し時間がかかってしまっても構いません。ここを疎かにして、中途半端な状態でやり過ごしてしまったり、誤って記憶したりしてしまうと、後で苦労することになります。
家庭で学校で習っていない分野を学習(いわゆる先取り教育)すると、この認知段階を家庭学習で経験することになります。認知段階での学習には丁寧なサポートが大事になってくるため、先取り学習をする場合には、誰かが勉強をみてあげられる体制を整える必要があります。例えば、親が勉強をみてあげる、丁寧な解説がついている教材を使う、塾や通信教育を使うなどが考えられます。
連合段階 = 身につける段階
獲得した知識を身につけるためには、何度も復習することが大切です。せっかく知識を得ても、使えなくては意味がありません。この段階は、学習内容によってとるべき方法が異なります。
ボリュームが小さい分野の学習
ボリュームが小さい分野の学習にあたっては、連合段階を通り過ぎて、一気に自動化段階まで持っていくという方法が効果的です。
例えば、「かけ算の九九」は、九九を暗唱できるようにしてから、百ます計算をして、目標タイムまで持っていくまでを、数週間くらいの短期で毎日集中的に取り組んで、一気にマスターしてしまうのが効果的です。タイムを計測する段階では、日々上達していくのが実感できるため、学習意欲を落とさずにマスターできることが多いと思います。
ある程度のボリュームのある分野
ある程度のボリュームのある分野の学習にあたっては、忘却曲線を踏まえた学習スケジュールをたてることが効果的です。この忘却曲線に基づいた学習方法は効果が非常に大きいことが、様々な研究で明らかになっています。
例えば、「漢字の学習」など、毎日コツコツ習得していくような分野では、中期的な学習計画をたてることが大事になってきます。可能な限り、忘却曲線を踏まえた学習計画を組み立てるのが良いでしょう。
忘却曲線を利用した学習計画の立て方については、下記記事でまとめています。
学習計画を立てたりするのは、学年の低い子にはまだ難しい場合が多いので、適切にサポートしてあげることが必要だと思います。
自動化段階 = 無意識で実行できる段階
身につけたことを無意識に実行できるようにするためには、そのスキルをどんどん使っていくことが大切です。自動化の段階にはいれば、そのスキルについてはマスターしたと考えて良いでしょう。
例えば、「かけ算の九九」をマスターするという短期目標を設定したとします。かけ算の九九の答えが、意識して計算しようとしなくても答えがパッとわかる状態です。このためには、九九がわかるようになった後も、何度も何度も復唱したり、百ます計算を何度も何度も取り組んだりという練習期間が必要です。
自動化段階に到達するには、相当な労力をかけて練習を繰り返すことが必要となる場合が多いため、焦りは禁物です。一方で、この段階に到達したスキルは、他の問題を解くために自由自在に使える武器となります。算数はセンスだなどと言われたりしますが、この自動化段階に到達したスキルの多さこそが、算数のセンスの本質だと思います。
まとめ
勉強を効果的かつ効率的にしていくためには、学習の過程を認知、連合、自動化の3段階に分けて、それぞれの段階で異なる勉強の方法を適用するのが大切です。学習の初期段階では子供がサポートを必要とする場合が多く、どのように取り組むかを考える必要があると思います。
自動化段階に到達したスキルは強力な武器になります。特に算数はセンスだなどと言われますが、実際にはこのようなマスターしたスキルを使って、たくさんの試行錯誤を高速で繰り返すというのが、学年が上がってきた時の算数の難問に対する向き合い方になります。
勉強とスポーツは似ている点が多いですが、意識すれば使えるという段階で満足せず、無意識下でも使えるレベルを目指すためには、意識すれば使えるスキルをさらに繰り返し練習する必要がある点も似ているところだと思います。